クリニックのサイトで体験談とビフォーアフター写真はどこまで使えるか——医療広告ガイドライン原文で確認する
美容医療や歯科のサイトで扱いに迷いやすいのが、患者の体験談と、施術前後のビフォーアフター写真です。「口コミは載せていいのか」「写真は説明を付ければいいと聞いた」など、伝聞で運用されがちなところでもあります。厚生労働省の医療広告ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)の本文から、実際にどう書かれているかを確認します。
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
体験談は「広告可能な範囲の内容でも」認められない
ガイドラインは、患者等の主観に基づく治療等の内容・効果に関する体験談について、医療機関が自院への誘引を目的として紹介することを指すとしたうえで、次のように整理しています。
こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療広告としては認められない。
そして重要なのが、これに続く一文です。
これは、患者等の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない。
つまり「書いてある中身が広告可能な事項に収まっていれば載せてよい」という理解は成り立ちません。体験談という形式そのものが対象になります。
例外として挙げられているもの
一方で、次のケースは広告に該当しないとされています。
個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない。
線引きは「誰の媒体か」だけでなく、医療機関が費用負担などの便宜を図って依頼していないか(誘引性)にあります。謝礼や割引と引き換えに投稿を依頼していれば、第三者の口コミサイトであってもこの例外からは外れる方向に働きます。
ビフォーアフター写真は「説明を付けた場合」に道が開く
施術前後の写真については、誤認させるおそれがあるものは認められないとしたうえで、条件が示されています。
また、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない。
さらに、説明の置き方にも注文が付いています。
当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用してはならない。
「注意事項は別ページにまとめてリンク」「小さな注釈で添える」という、よく見かける作りは名指しで否定されています。
加えて前提となる一文があります。
なお、治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、第5に定める要件を満たした限定解除の対象でない場合については、術前術後の写真等については広告できない。
写真を使うなら、次の限定解除の要件を満たしていることがまず必要になります。
限定解除の4要件
ガイドラインは、広告可能事項の限定解除が認められるのは①〜④のいずれも満たした場合とし、③と④は自由診療について情報を提供する場合に限るとしています。
- ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
②の問い合わせ先は、電話番号やメールアドレスを指すと説明されています。③については、治療名と最低料金だけを見せるのではなく、通常必要とされる治療内容・標準的な費用・治療期間・回数まで示すこと、標準的な費用が明確でない場合は最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)の範囲を示すことが求められています。
検索広告やバナーは①を満たさない
見落とされやすいのがここです。
インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、①を満たさないものであること。
自院サイトでは限定解除の枠内で書ける内容でも、そのままリスティング広告の文面に転用すると要件から外れます。媒体を移すときに表示できる範囲が変わる、という点は運用ルールとして持っておくと安全です。
サイトを点検するときの順番
- 体験談の掲載をやめる/切り分ける:自院サイトに患者の声を載せていないか。第三者の口コミサイトを引用・転載する形も、誘引性の観点で見直す。
- ビフォーアフター写真の説明を同じ画面に置く:治療内容・費用・期間・回数、主なリスクと副作用。別ページのリンクや極小の注釈にしない。
- 限定解除の要件を満たしているか確認する:問い合わせ先の明示、自由診療なら費用とリスクの情報提供。
- 広告に転用するときに再点検する:リスティングやバナーは限定解除の対象外という前提で文面を作る。
まとめ
体験談は形式そのものが認められず、ビフォーアフター写真は説明の中身と置き方まで含めて条件が決まっています。どちらも「表現を少し和らげる」だけでは解決せず、ページの構成を変える話になります。
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